君の瞳に魅せられて ***春日の恋***
俺は、万里を引き上げて


ベンチに座らせ頭を撫でる。


「ゆっくりでいいんだ、

 慌てなくていいから、

 俺のためにゆっくり

 大人になって。」


ドキドキしていた。

俺のために背伸びして

恋をしようとする万里を

心から愛しいと思い始めていた。


「約束する。

 万里の所に戻ってくるから。

 待っててくれる?」


万里はこっくりと頷き


俺の肩に頭を預けた


おでこにキスを落とすと


「そろそろ行かなくちゃ。」


ベンチを立って手を差し出す。


俺たちは手を絡めて手を繋ぎ


黙って駅まで歩いた。


涙が溢れそうな万里の大きな瞳に映る俺は


ゆらゆら揺れて


俺の気持ちみたいだと思った


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