この恋が叶わなくても


とにかく大翔の家に向かった。自分だけが被害者になるなんて、プライドが許さなかった。

あたしは浮気された身なのだから、愚痴の一つや二つくらい言い捨てる権利はあるよね。


けれど、大翔と浮気相手の子が幸せにしている姿を、あたしは目を閉じずに見れるだろうか?

…きっと無理だよ、だって大翔のことが好きだもん。



待ち合わせたバス停から大翔の家までは、すごく近くて徒歩三分でついてしまう距離だった。


大翔の家の前についてから、大きく息を吸った。

落ち着け、自分。



あたしがインターホンを鳴らしてから、すぐに通話ボタンが押されたようでインターホンの奥から大翔の声がした。



「どちら様ですか?」

『美春…だけど』

「はっ!?なんでいるんだよ」

『大翔のバカっ』


思い切り叫んでやった。


「は?いきなり、どうしたんだよ。意味わからな『あたしと約束していたのに、浮気していたんでしょう?だからもう別れようって言いたくてここに来たの』

「約束って?約束なんかし『浮気相手との約束で頭がいっぱいだったんじゃないの?あたし、浮気している大翔は好きじゃないから。だから別れたい』



浮気している大翔は好きじゃないなんて言ったけれど、好きだ。本当は好きなのに、別れたくなんてないのに。

自分が傷つくのが嫌だから、こうして逃げてしまう。

大翔にこんな暴言を言ってしまったあたしは、もう嫌われてしまうのだろう。


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