この恋が叶わなくても


最近、大翔もよくサボっている。だから、保健室に行けば居合わせてしまう可能性が高い。


そんな単純な理由であたしは、保健室には行かずにここ最近屋上に行って現実逃避をしている。

本当は立ち入り禁止の屋上。
ダメ元で回したドアノブが音を立てて回って、屋上のドアに鍵がかかっていないことが最近判明したのだ。



今日も屋上へと続く階段を上り、少し重たいドアを両手で押し開けた。

屋上へ足を踏み入れると、セミロングのあたしの髪がそよ風に靡(なび)いた。



この風、懐かしい…
不意に思った。

帰り道、大翔に“好き”と言われた日もこんなそよ風が吹いていた記憶がよみがえった。


とたんに、胸が高鳴った。



『………っ』

あの頃に戻れたら、なんて叶わない願望が頭を過る。



あたしは屋上の出入口から一歩踏み出したところで、立ち止まってしまった。

どうせ、誰も来ないから誰の邪魔にもならないよね、


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