この恋が叶わなくても
そよ風のせいで、大翔とのこと1つ1つを思い出してしまう。
……帰ろうかな。
今日みたいなそよ風に、いつまでも当たっていたら、未練が消えないかもしれない。
くるり、と方向転換をして出入口のドアに向かった途端。
ドアが開いた。
『………っ?!』
驚きすぎて声にならなかった。
「あ、ごめん」
ドアをくぐって現れたのは、テレビから抜け出してきたような芸能人のように容姿端麗の名前の知らない人だった。
おまけに、背も…175センチ、いや180センチあるかもしれない。
その人の全身をざっと眺める。
あ、ネクタイの色が赤。ってことは1つ上の先輩か。
こんなにかっこいいひと、ここの学校にいたんだ。
顔をじっと見つめた。
見つめると、目を離せなくてずっと見つめてしまった。
「あ、のさ」
『…っごめんなさい!』
慌てて目を反らした。
「いや、別にいいけど。そんなに見つめられると恥ずかしいから」