この恋が叶わなくても
◇第1章◇
こころの傷
ずっと考え事をしていた。
考えなくてはならないことなんて特になかったけれど、取り敢えずどうにかして頭に隙間を作りたくなかった。
好きなアーティストのこと、友達のこと、将来の夢のこと……ジャンルを問わずにただただ思い付くままに考えてみた。
そうすれば、数分だけでも頭の中から“昨日のこと”がなかったような気になれた。
早く忘れたい。
けれど、そう思う事に限って忘れられないんだ。
どうすれば、早く忘れることができるの?
この世に、忘却の薬があればいいのに。それでもなければ、記憶喪失になりたい。
あたしの記憶に消えて困る記憶なんてないから、いっそのこと全て忘れて一からやり直すのもアリかも。
…そうすることができたら、の話だけど。