この恋が叶わなくても
『…すみません』
もう一度謝って、それからしばらくの沈黙。
少しだけ人見知りのあたし。そして沈黙が苦手なあたし。
今すぐにでも帰りたい。
そう思った。
『あの…、そこ、どけてくれませんか?』
出入口のドアをとおせんぼするかのように立っている先輩にうつむきながら、小さな声で言った。勇気を出して沈黙を破ったあたし。
「なんで?」
『えっ……?』
「だから、なんで」
さっきよりも、力強い口調で問われた。……こわい。
『…帰りたいから、です』
「それって、俺がここに来たから?」
違う、って言わなきゃ。
そうしないと。怖い、それがこの人の本性だから。
あーっ
妙な時間が開いたせいで、なかなか言い出せない
どうしよう………。
また、さっきみたいに力強い口調で言われたら……
「帰らないで」
……ん?
「せっかくだから、1時間だけ俺の話し相手になってよ」
『はなしあいて?』
「そ、」