この恋が叶わなくても


「美春?」

真っ正面から親友の咲希の声がした。あたしの意識は現実の世界へと引き戻された。


『なに?』
平然を装って応えた。


「大丈夫?朝から何か変だよ」


咲希はあたしを心配しているかのように、あたしの目の奥を見つめていた。

それは、あたしが咲希に隠し通そうとしていることを見つけ出そうとしているかのようだった。



『大丈夫。昨日ちょっと夜更かしして眠いだけ』

我ながら、よく出来た口実だと心の中で思った。


「もしかして勉強してたの?」

あたしはコクリと頷いた。
期末考査が近いから勉強していた、ってことにしよう。



「そりゃあ眠くなるわけだ。勉強お疲れ様」

『うん、ありがと』


意外とすんなり納得して自分の席に戻ってしまった咲希。ほっとして思わずため息が漏れた。

…あたしは今学校にいて自分の席に座っている。

学校で考え事をしすぎると、少なからず数人(特に咲希)に心配されてしまう。
学校で考え事をするのは、少し控えることにしよう。


今みたいに誤魔化しがきけばいいのだけど、そうはいかない時もきっと来てしまうから。

今のうちにやめておこう。



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