この恋が叶わなくても


「辛かったよね……?気づいてあげられなくて、ごめん」

『ありが、と』


昨日のことが脳裏をよぎった。どうして、あたしの心は大翔でいっぱいになってしまったのだろう。

少しだけでも心に隙間があれば、こんなに苦しくて辛い想いをしなくて済んだはずなのに。

まだ、大翔が好き。



「……美春?」

いつの間にか、あたしの頬に涙が伝っていた。涙なんて流すつもりじゃなかったのに。
けれど、涙は一度出てしまうと、なかなか止まらない。小さな頃からそうだった。


『ごめん、なぜか涙流れちゃった』

そう言っているうちも、頬には涙が数滴流れた。


昨日は“絶対に泣かない”と決心して、夜寝るときも、泣かないように努力したのに。

なぜ、今になって涙が溢れてとまらなくなるのだろう。


「次の授業、受けれる?」

泣いた後に、教室になんて行けない。目がほんのり赤くなっているあたしを見れば、数人が“泣いた”と気付くだろう。

それに、特に大翔にはこんな姿見せたくない。こんなに弱った姿、絶対に見せられない。


あたしは首を横に振った。

涙はまだ止まらない。涙を一度拭った。



「授業、さぼろう」

『うん』


ただ涙が流れているだけだったから、意外と普通通りに話すことができた。


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