車にはねられた猫
ねこ


まだ生きている。
くしゃみのような音を出して、猫は血を吐いた。それはあまりに鮮やかな赤だった。私は思わず後ずさった。


今にも沈みそうな、冬の夕方の力の無い陽光が、紅い液体を照らした。コンクリートに血が滲んだ。


「もう、きっと助からないよ。」


母の言葉を聞いて、突然涙が溢れた。
命を救おうと、燃え上がっていた使命感が一瞬でくじけた。


確実に、まだ息はある。なのに、目の前にいながら、私たちは何もできないのか。


体の力が抜けていく。






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