車にはねられた猫
わたし
翌日。日曜日。よく晴れていた。
少しだけ寝坊したので、ひとりでトーストを食べる。
あの猫は、どうしたろうか。
昨日まで、暇さえあれば妄想をしていた脳内。
今朝は、あの猫のことで埋め尽くされていて、他にものを考える余裕はない。
くだらないことに思考を使っていた自分がアホみたいに思えた。
あの猫を見る直前まで、私はなんの利益もない幻想を描いていた。
なんの幻想って、ありもしない恋愛のことだ。
でも、受験生としていろいろ節制している今、それが唯一の女子高生らしいささやかな楽しみで。
ささやかな楽しみこそが、生きることの醍醐味、とすら、心の中では豪語していた。
つまらない思考だって、積み重なって、私の人生のパーツとなっていく。
あの猫にだって、もちろん、そういった小さな生命のパーツがあったわけで。
あの猫は、きっと、最期まで意識があったと思う。母にむかった、小さな威嚇がその証拠。
体が言う事をきかない状況で、あの猫は何を考えていたのだろうか。