ルビゴンの河の先
11. 夢なら醒めないで
―――いよいよ明日、小田原攻めのため東国に出発することになっている。
前日の晩ということもあって、秀吉公も官兵衛も床についてしまったらしいが俺にはまだ眠気がおそってこない。
眠れない夜の恒例となっている縁側に足を向け、柱に寄りかかったまま夜空に浮かぶ月を見つめていた。
「…これが終われば、」
これが終われば秀吉公の天下掌握が完了する。
そうしてやってくる太平の世をこの目で見ることができるとは、少し前の俺なら想像もできなかった。
―――あかり、行ってくる。
胸元にある揃いの指輪を着流しの上からぎゅっと掴み、俺は月に誓った。