ルビゴンの河の先
12. our earnest wish -悲願-
二度と手には入らないはずだった女が、今この腕の中にいる。
そう思った瞬間心が甘く疼いた。
―――翌日。
まだ目覚めないあかりの傍らに座り、その頬に指を這わせた。
俺はまた小田原に発たなければならない。
目覚めないあかりを1人置いていくのは気が引けるが、軍師として秀吉公のそばに行かなければならないのだ。
「………あかり。早く目覚めろよ」
少し痩せてしまったようだけど、その唇だけは俺を誘惑するように柔らかい。それを親指で撫で、その親指を自分の口元に寄せた。