ルビゴンの河の先
誰でもよかった。
なんでもよかった。
私以外の、人の気配。
いつかいなくなる人だけど、せめて今だけ。
…阿呆だなんて、言われなくたってわかってるよ。
「いてほしいんですよ、あなたに」
私がぽつりと漏らした一言に、竹中さんはしばらく何も言わなかった。
何を言ってるんだ、とさっきの言葉に恥ずかしくなった私はその場で俯き、床の模様を見つめる。
そのとき、カタンと音がした。
「甚だ不本意ながら世話になる。よろしく頼む」
顔を上げると、きれいな姿勢で私に土下座をする竹中さんの姿があった。