ルビゴンの河の先
かちかち、と時計が時を刻む音だけが室内に響く。
―――未来の世。
到底信じられない状況に立たされた私は、それでも冷静だった。
急に来たということは急に戻れるということ。
だとしたら、この家の主を頼るほかない。ここからやってきたのだから。
この時代は女であっても外に働きに出るらしく、今朝あの女も慌ただしく出掛けていった。
暇つぶしにと何冊かの分厚い書物が机に積まれており、小腹が空いたとき用にと白米の握りと茶の用意されている。
…なぜここまで甲斐甲斐しく得体の知れない男の世話を焼くのか全く解せなかった。
「…人好しめ」