ルビゴンの河の先





俺は窓際に座布団を移動し、書物を一冊手に取る。
手触りのよい紙の質感にも溜息がこぼれた。



「呑まれてしまうな…」






初めてここに来たときから感じる柔らかさ。
この時代からはどこを見渡しても鋭さが感じられないのだ。


…隙だらけのあの女の様子に、正直俺はとっくに警戒心を失ってした。
だからといって信用しきれているかと言えば、それは否。


軍師として生きてきた者の本能だけは捨てきれない。


…俺は必ず主の元に戻るのだ。そのためだったら何を利用しても、誰を利用しようとも。





< 32 / 144 >

この作品をシェア

pagetop