ルビゴンの河の先





こんな気持ち、俺は知らない。


…こんな風に泣く女を見たことない訳じゃない。
夫を亡くす妻。親を亡くす子。
戦乱の世にはありふれたその光景のどれとも違うあかりの姿。


嫌だ。泣かせたくない。
笑ってくれ。
はしゃいでくれ。
―――俺を見てくれ。






「…帰りましょう?」


そっと囁くような声に俺は我に返り、あかりを見た。…少し腫れぼったい瞳にはいつものように俺が映る。



「あぁ、帰ろう」


俺がそう返すと嬉しそうに頷いた。





< 62 / 144 >

この作品をシェア

pagetop