ルビゴンの河の先
こんな気持ち、俺は知らない。
…こんな風に泣く女を見たことない訳じゃない。
夫を亡くす妻。親を亡くす子。
戦乱の世にはありふれたその光景のどれとも違うあかりの姿。
嫌だ。泣かせたくない。
笑ってくれ。
はしゃいでくれ。
―――俺を見てくれ。
「…帰りましょう?」
そっと囁くような声に俺は我に返り、あかりを見た。…少し腫れぼったい瞳にはいつものように俺が映る。
「あぁ、帰ろう」
俺がそう返すと嬉しそうに頷いた。