ルビゴンの河の先
俺はまだ妻を得ていない。
そんなものに気を取られるくらいなら、主の元で天下を目指して駆け回っていたかった。
世継ぎを望む声もあり、有り難いことに見合いの申し込みもひっきりなしではあったけど、俺は見合いすら応じなかった。
“愛”だなんて必要ない。
主の他に守るものなど増やしたくなかった。
―――あかりは?
これじゃあ、さっき思った“あかりを守りたい”という感情の説明が付かない。
…いや。気の迷いだ。
あの柔らかい生き物なら誰もがそう思ってしまうんだろう。
そう思った俺は、この感情に蓋をした。