あいなきあした
「あのヒロミって女、オレらの界隈では有名な”ファック隊”っすよ。いや、オレのせいですけど、ケイジさん、いい加減目ェ覚ましたらどうっすか?」
いつもは無頼でロックなアキラに心配されるとは、いよいよ俺もヤキが回ってきたと見える。
「お前が引き取らないから抜き差しならなくなったんだ。おじさんに教えて欲しいんだが、その”ファック隊”ってなんだ?」
「バンドの男(メンズ)を喰う目的でライブに来る女らっすよ。ま、ビジュアル系は女にウケてなんぼなんで、ヤリ目から彼女狙いまでいろいろっすけど、こいつらに多少援助してもらうんですが、アイツの場合、同じバンド内のメンも喰っちまうんで、『クラッシャー』って呼ばれてるんすよ…。」

結局ヒロミとはなし崩し的に一緒に暮らしている。
俺も相当な馬鹿だ…。
「親御さんが心配するだろ?」
「親にはもう見離されてるって言ったじゃん。なによりここ、食うに困らないのがいいよな。」
「いや…男と暮らすという事はだな…何があるか、分からんだろ?」
「何なら、試してみる?」
蠱惑的な瞳に見つめられると俺は情けないやら二の句をつなげなかった…。美の極致とは思えないが、美形とも取れるし、何より、男好きのする雰囲気は、虜にして離さない何かを感じずにおられなかった。

アキラはこのヘンテコな組み合わせを少なからず楽しんでいるらしく、
「飽きたら出て行きますよ」
と矛盾した事を言って、鼻息混じりに微笑う。
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