誘う華
ぶつぶつ文句を言いながらゼオンがキッチンでカチャカチャと食器を片付けている間に、あたしはクローゼットから今日着る服を引っ張り出しついたてに隠れて着替える。


無駄に多い服達。
どれもこれも重役たちが魔物の機嫌がよくなるようにと市民の税金を使い持ってきたもの。

この塔だって小さい割にはかなり豪華な作りをしている。


市民からしてみれば、あたしは税金を使い貢がれているようにしか見えない。


「ベルは、やっぱ白のドレスがいいな。白銀の髪と金の瞳によく合う。」

片付け終ったゼオンが手を服で拭きながら言う。

「やだッ。着てるのは毎日同じでしょ。それにドレスじゃなくて、これはワンピースっていうの。」


あたしは同じ様な作りのワンピース5枚をローテーションで着ている。
だって、それ以上は必要ないし着飾る理由もない。

だから着ないドレス達はゼオンに頼んでお金にしてもらい、孤児院などに寄付してもらっている。
それでも、まだまだたくさんドレスは並んでいる。
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