黒い炎
「鈴、中入ってて?あたし飲み物取ってくるから」
「あ…うん…」
部屋に入る前にチラリと俺をみた彼女は、ぺこっと頭を下げた。
バタンと閉まった扉を眺めていた俺を、バシンと叩きリビングに行くよう促す桜。
「って…乱暴なオンナだな…」
「早くして」
「わかったよ…」
いつになく真剣な様子の姉の後ろを追い歩いた。
リビングのソファーに腰を下ろした俺は、ダルそうに傍らに立つ桜を見上げた。
「で…なに?」
「鈴には近寄らないでほしいの」
「なんで?桜の友達だし挨拶すんの当然でしょ?」
「あの子はあんたが相手をしてるようなオンナ達と違う…だから…」
「俺…鈴さん気に入ったんだけど?」
「だめ、絶対だめよ!」
桜は強い口調で俺を睨む。