黒い炎
《side 桜》
「鈴、今日は昴さんとデートだっけ?」
「…デートじゃない」
プクッと膨らませた鈴の柔らかな頬を、つんとつついて桜はケラケラと笑う。
「デートでしょうが」
「出かけるだけだもん…相手はお兄ちゃんだし…」
「なーに言ってんのよ、ついこの間まで普通にデートだって言ってたじゃない」
「…え…あ…そ、そうだけど!とにかくデートじゃないの!」
鈴は「…違うもん」と、小さく言いながら教科書を鞄にしまう。