黒い炎

そんな鈴を桜は複雑な表情で見つめた。




――…



「昴さんによろしく!デート楽しんでおいで」


「もー…違うのにぃ」


そう言って可愛らしく唇を尖らせた鈴は、「はぁーっ」と小さく溜め息を吐き出し教室を後にした。



「なぁに溜め息吐いてんだかあの子は…」


桜は後ろ姿を見送りながら呟いていた。



確実に鈴の中で何かが変わろうとしている。



『デートじゃない』なんて…鈴があんな事を言ったのは初めてだった。



優弥との出会いがそうさせたのか…。




優弥と鈴、2人の過去を知り共に過ごしてきた時間が桜にはある。





その過去のせいで、"女"という生き物を嫌い、玩具のように扱う優弥。



鈴の事も…でも…鈴に接する時の優弥は、色のない冷たい瞳をしてはいなかった。

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