黒い炎

鈴だって同じだ、過去の出来事のせいで男と目さえ合わせられず、怖がり震えていたのに…。





『…優弥さん』





その鈴が、身内以外の男の名前を口にし笑いかけた。



正直驚いたが、少しずつ変わり行く彼女を嬉しく思う。



だが相手が優弥なのが気にかかる…。



「はぁぁーーっ」



考えれば考えるだけわからなくなる。



長い溜め息を吐き出し、桜は小さく呟いた。



「溜め息吐きたいのはこっちの方だよ…」




桜は鞄を持つとゆっくりと席を立ち、またひとつ溜め息を吐き歩き出した。


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