黒い炎
《side 鈴》
『デート楽しんでおいでー』
なんて、ケラケラ笑う桜ちゃんに見送られ教室を後にした。
その声にいつもなら頷けた…筈なのに…今日は素直になれない私がいた。
"デート"に大した意味も無いと言うのに、鈴は何となく嫌だと感じたのだ。
それが何故だかは解らないが…。
校門の側で待つ兄の車に乗り込む。
「お帰り」と微笑み兄に「ただいま」と返し、心の中で兄に懺悔する。
兄は自分を犠牲にし、彼女も作らず私に尽くしてくれているのに…"デート"じゃないなんて…ごめんなさいお兄ちゃん…。