黒い炎
「なにムキになってんの?」
「さっきの鈴をみたでしょ?」
「男ギライだろ?」
「正確には怖いのよ …ちょっとあってね」
『何かって?』俺が聞くより先に桜が言う。
「とにかく鈴には近寄らないで!わかった?」
凄まれた俺は、思わず頷いていた。
だけど…"近づくな"と言われれば、尚更"近づきたい"と思うひねくれた俺。
彼女が"何か"を抱えているのは確かだ。
俺にはわかる…"何か"を抱えているのは同じだから。
薄いガラスのような儚さをもつ鈴。
乱暴に扱えば、途端に壊れてしまうだろう 。
でも――そんな彼女に『触れたい』と、思ったのは確かだった。
鈴…彼女との出逢いは、色の無い世界にほんの少し色をつけたのかもしれない。