黒い炎
心の奥底で、快楽を求めるイヤらしい自分が笑っている。
そんな自分が嫌で、『男』という存在から自分を遠ざけているのかもしれない…あの庭師の彼を悪者にして…。
「鈴どうした、やっぱり何かあったか? 」
「…えっ…いや、何もないよ」
「何かあるならちゃんと言えよ?」
「うん、ありがと」
心配そうな兄に笑顔を向けると、安心したのか微笑み返し「行こう」と兄は車を降りた。
―――…
――…
繁華街で夕食をとり、『少し歩こう』と言う兄の後に続く。
俯き気味に、少し後ろを歩く私を時々気にする兄に、「心配性…」なんて呟いてふと顔をあげた。