黒い炎
「早くお風呂に入りなさい」
「わかってるわよ…子ども扱いしないで」
「…鈴…どうした?今日は妙に苛ついてるようだけど…」
「苛つく?私が?何でよ…」
「ほら、そうやってつっかかるだろ?何かあったのか?お兄ちゃんに話してみ…」
「お風呂入る」
兄の言葉を遮り、私は一旦自室へと向かった。
「……鈴」
「坊ちゃま…」
「華さん、鈴はどうしてしまったのでしょうか…」
「何か悩んでおられる様にも見えますが…もしかしたら…」
「もしかしたら?」
「……"恋"…をされているのかもしれませんね…でも…あの時の傷が邪魔をし、踏み出せずにいるのではないのでしょうか」
「恋か…傷が深くならなければいいが」
自室に飛び込んだ私は、兄と華さんがそんな会話を交わしていたなんて知らずにいた。