黒い炎
「…10時か」
ふと目にした時計に、10時を少し過ぎた頃だと気づいてまたため息が漏れた。
「優弥くん帰って来なかったな…」
桜ちゃんと久しぶりにゆっくりと過ごせて嬉しかった…でも
…もう少しだけ、あと少しだけ、と思いながら帰り時間を遅らせた。
優弥くんに会えるかも…と、淡い期待を抱いて。
「バカみたい…」
優弥くん彼女いるかも知れないのに…。
それ以前に男の人はまだ怖い筈でしょ?…男の人を…彼を好きになるなんて私には無理な事なんだよ?
そう自分に言い聞かせる。
あんな事さえ起こらなければ、あの庭師の彼さえいなければ…今更責めてみたところで、心の傷はそう容易く消えてくれはしない。