黒い炎
鈴の中で闇が蠢いていた。
本当にあの庭師の彼だけのせいなのか?
無知で無防備な己が招いた結果ではないのか?
「…ぅ…ぅ…」
小さな呻き声をあげ、鈴はその場にうずくまった。
こんな私が、誰かを好きになるなんて駄目なんだ…優弥くんを好きになってはいけない。
好きになってはいけない…好きになってはいけない…いけない…いけない。
そう…繰り返し唱えて、開きかけた心に蓋をした。
暗い闇がその心を隠すように広がって行く。
立ち上がりふらふらと歩き出す。
ふと、鏡に映った自分に苦笑した。
「ふっ…酷い顔」
やはり、こんな自分は彼に似合わない…鏡にうつる鈴の瞳は、暗い悲しみに満ちていた。