黒い炎
玄関の扉を開け靴を脱ぐ。
その時ふと違和感を感じたが、気にせず家の奥へと進みリビングにたどり着いた。
いつも煩い桜の姿は其処には無く何と無くホッとしていた。
キッチンに足を向ける俺の鼻腔をくすぐる香り。
テーブルにはラップをされた一人分の食事が置かれていた。
桜一人が作るわけが無い…。
それに…玄関で感じた違和感。
白いスリッパが隅で遠慮する様に並んでいた。
鈴が来て居たのだろうか?
「鈴来てたわよ」
テーブルの食事を見つめ考えていた俺の耳に届いた声。
ビクッと身体を揺らす俺に、桜がふふっと意味深な笑みを浮かべ近寄る。
「久しぶりに鈴が来たのに残念だったわね、あんた何してたのよ…あの子残念そうにしてたわよー?」
「別に鈴が来ようが来まいが関係無いし」