黒い炎
亮が桜と会うって事は、桜は家にまだ帰らない…鈴も来ないってことか…。
だから何だと聞かれても困るが、何故か思うのは鈴の事ばかり。
「ふぅーっ」
息を吐いて、訳のわからぬ胸のモヤモヤを抱えたままの俺は一人街を歩いていた。
俯きがちに歩いていた俺が、ふと顔をあげ車道に目をやった時だった。
あの車…?ふと視界に入った高級車。
次の瞬間、俺は何かに吸い寄せられるように、その車を追うように走り出していた。
「鈴」
彼女の名を口にしたことも気付かなかった。
信号待ちで止まる車に追いつきたい一心で夢中で走った。
後もう少し…信号は赤から青に変わる。
御構い無しに進む車。
「っ…はぁ…はぁ…だっせぇ」
追いつけ無かった…立ち度まった俺は膝に手を置きはぁはぁと荒い息を吐いた。