黒い炎

固まったままの彼女を腕の拘束から解き放つと、ホッとしたように息をついた。




「上がれよ」




黙って俯いたままの鈴に家に上がるように促し、脇に置かれた白いスリッパを置いてやる。



「…あ…ありがとう…ございます」




俯いてそう言った彼女の表情はよく見えなかったが、靴を脱ぐ姿を見てホッとした俺がいた。



かおには出さなかったが、衝動的に抱き締めてしまって嫌がられたかと内心では思っていたから。



こんな事思うなんて初めてだな…よぇーな俺って…リビングに向かいながらそんな事を思っていた。



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