黒い炎
「優弥くん…さよなら」
そう言って、小さく手を振った鈴が帰って行く…迎えにきたアイツの兄貴と…。
遠ざかる車を見送る俺は無性に苛ついていた。
当たり前のように鈴に触れ、当たり前のようにあの笑顔を向けられる…俺はあの人に…。
兄貴だろ?当然だろ?
ただ…羨ましいだろ?といわんばかりのあの人の表情が目が俺の中の黒い物を増幅させてゆく…。
「悋気」
遠ざかる車を、いつまでも見ていた俺の後ろから聞こえた声に振り向くと、桜がニッと笑って近づいて来た。
「りんき?」と呟いた俺の肩を桜がポンと叩く。
「嫉妬よ、嫉妬!!優弥…あんたもちゃんと感情あったのね、良かった良かったね…亮!」
「うん、そうだね桜さん!」
好き勝手言って満足げな2人は、立ち尽くす俺を残しマンションへと消えて行った。
「何なんだあいつら…」
もう一度鈴が帰った方向に目をやると、ため息を一つ落とし俺もマンションへと足を向けた。