黒い炎
「…あの…」
暫くして遠慮がちに俺に声をかけてきた鈴。
「何?」
恥ずかしげに俯く彼女の顔が良く見たくて、近づいて覗き込んだ。
「…ぁ…ぇ…?…あっの…ちょ、ちかすぎです…っ…んっ….」
顔が近いと慌てて離れようとする鈴を引き寄せ、その口を塞ぐ。
「鈴はすぐ忘れんだな?…敬語ダメって言ったろ?…それとも…キスして欲しくてわざと言ってんの?」
「ちっ、違う…もん…そんなんじゃ…きゃっ!」
かぁっ、と真っ赤になった鈴が可愛くてさらに強く抱きしめ髪に顔をうずめれば、甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「…俺はもっとキスしたいんだけど鈴と…」
彼女の目を見つめそう言って、柔らかな唇を啄む。
俺の胸を押し返す小さな手に、グッと力がこもる。
「なに…ヤなの?」
「…違う」とフルフルと小さく首を振る。
「なんで…ゆうやくんは…私にキス…するの?…なんで?彼女…いるのに…なんっ…」
瞳を潤ませ訴える鈴が可愛くて、最後まで言い終わらない内に俺はまたその唇を覆った。