黒い炎
「あのさぁ俺…彼女なんていないけど?」
「え?…嘘、だって…わたし見たよ?優弥くんが…その…」
「なに?」
「お、女の子と…腕を組んで歩いてるところ…」
「女の子?…」
暫く考えてみた…誰だ?最近は女と絡む事が無かった…わかんねぇな。
「多分同じ学校の奴だろ彼女じゃない」
「彼女じゃないのに腕を組んだりするの?」
「鈴は彼女じゃないのに俺とキスしたけど?」
「…っ…それはっ…」
俯きスカートをギュッと握る鈴の手に、そっと自分の手を重ねた。
「彼女…だったらいいんだキスしても」
「そ、そう…じゃない…かな?」
小さな声で少し首を傾ける鈴。
「ふーん…じゃあさ…彼女になれば?」
「……誰の?」
「俺の」
「だ、誰が?」
「鈴が」
「………?!」
パチパチと何度も瞬きを繰り返し、半開きの口でかたまったまま動かない鈴。
「おーい?どうした?」
つんっとオデコをつついても、「彼女?…わたしが?」とぶつぶつと独り言を呟きぼーっとしている。
「なれよ彼女」
耳元で囁き赤くなった頬をそっと撫で目を合わすと、こくんと頷いた彼女の唇を塞いだ。