黒い炎
上品そうな白い封筒。

「はぁーっ」

開封し取り出した便箋をひろげた。


綾部 優弥 様

今ごろになってこんな手紙を
送ることをお許しください。

こめんなさい。

あなたには、この言葉しかありません。

本当にごめんなさい。

あの頃私は大学生で、父と交流のあった
あなたのお父様に好意を抱いていました。

しかしお父様は奥様をとても大切にしておられ、
私の事など相手にはしてくれませんでした。

そんな時、あなたの家庭教師を探していると
父に聞き頼み込んでお願いしました。

お父様にはお断りされましたが、
奥様に誤解されたくなければ雇って
下さいと卑怯な手段をとりました。

お父様そっくりのあなたに会うたび、
私を見て欲しい、相手にして欲しいと
強く思うようになってしまったのです。

なにもわからないあなたを利用して、
自分の欲求だけを満たし悪戯にあなたを
傷つけてしまった。

自分を見失っていた私はそれがわからなかった。

親になった今、後悔が押し寄せ、
いても立ってもいられずペンをとりました。

許して下さいとは言いません、
許される事ではないのだから。

本当にごめんなさい。

どうかあなたが幸せでありますように。
願う事はお許し下さい。



そう…書いてあった。





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