黒い炎
"優弥くん"
他の女達が呼ぶ時の甘ったるいのとは違う、透明感のある鈴の声。
それが何故だか耳から離れない。
鈴の声に跳ねた心臓…。
「わかんねぇな…」
「なにがー?」
呟いた俺に、亮は不思議そうな顔をした。
「なんでもねぇよ…部屋行くぞ」
「はいはい」
チラリと桜の部屋のドアに目をやり、俺は自室へと向かった。
ベッドに寝ころび目を瞑り考えてみた。
さっきのは何だったのだろう?と…。
俺の鼓動はおかしくなったのか?…考えても考えてもわからない。
なんとも不可解な心悸。
恋愛に興味も無く、愛なんて信じない俺に、この胸が跳ねた意味なんて解る訳がなかった。