黒い炎

「ちょっと優弥」


「あ…桜ちゃん…わたしなら…」


鈴がか細い声で桜にそう言った。


「でも…あーもーしょうがないわね!」


"鈴に何もしないでよ"俺の耳元で囁いた桜が、イライラしながらでもどこか嬉しげに、キッチンを出て行った。



ぐつぐつと鍋の煮える音だけが響くキッチン。



彼女の緊張が伝わるような気がする。



ガタンと音をさせ立ち上がった俺に驚き、目を丸くして肩を上げた鈴。


「そんな緊張しないでよ…何もしないよ?」


静かに近づき鈴の長い黒髪を一束掬った。


「綺麗な髪…」


さらさらとこぼれ落ちる髪を眺める。



キミに触れたい衝動は止まらない。



緊張で強張る鈴の表情が、俺を更に煽る。
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