黒い炎
誰かに触れたくて、こんなにもぞくぞくするなんてない。
「きゃっ!」
ぐっと近づいた俺から逃げるように、後ずさった鈴が飛び上がった。
鍋に手が触れたのだ。
「こっち早く!」
その手を掴み素早く流水に当てる。
ふわりと鈴から優しい香りがし、俺の鼻腔をくすぐった。
キツい香水とは違うその香りに、俺は何故だか安らぎを感じた。
「…あの…もっ…だ、大丈夫…だよ?…あり、ありがとう」
「あのさ…名前呼んで呼んでよ俺の」
「…ゆ、ゆうや…くん?」
不思議そうに小首を傾げる鈴が可愛くて、ポンポンと頭を撫でた。
「よく言えました」
「…ゆうやくん…変です…///」
耳まで真っ赤になった鈴は、恥ずかしげに俯いた。