黒い炎
「俺も…鈴って呼んでいい?」
「え…あ…うん…」
小さく頷いた鈴がはにかむ。
「優弥、鈴に変な事しなかったでしょうね?」
キッチンに戻った桜が俺を睨むと、鈴と俺の間に割り込む。
「桜ちゃん…優弥くんは何も…」
「鈴、鍋に手が当たったみたい…見てやってよ、一応すぐ流水に当てたけど」
「鈴って…」
桜は一瞬止まったが、鈴の手をとり確認する。
「あ、少し赤くなってるー」
桜は慌てて救急箱を引っ張り出し、軟膏を鈴の手に塗りたくっていた。
「だ、大丈夫だよ…桜ちゃん!」
桜の慌てようにクスクスと笑った鈴は、ねっ?と小首を傾け桜に手を見せた。
鈴の白く美しい手は、軟膏でベタベタになっていた。
「ぷっ、桜…塗りすぎだし」