黒い炎
「…あ、ごめん鈴…やっちゃった」
苦笑いする桜に、「大丈夫」と言って鈴は静かに微笑んだ。
透き通るような透明な笑み。
そんな彼女の姿から、俺は暫く目が離せなかった。
だがそんな鈴もまた、同じ闇をさ迷っているのを優弥は知らないでいた。
「優弥…鈴さん見過ぎ」
不意に亮に囁かれ、はっとした俺。
「べ、別に見てねぇし」
「隠すなよっコノコノー」
肘で俺をつつく亮を無視して、俺はキッチンに立った。
「これ運ぶよ?」
「あ、お願い…亮、お皿」
「はい、桜さん!」
亮は嬉しそうに皿を出している。
「お前は召使いか?」
「るせぇ」
小声で言い合いながら、夕飯の準備をなんとか終えたのだった。