黒い炎

「鈴さん?俺も帰りますから」


それなら…と、鈴が申し訳無さげに言うと、桜がポンと肩を叩いた。



「なに遠慮してんのよ…こいつらに気を使うことなんてないからね?」



俺達を横目に桜は鈴の手を引き、到着したエレベーターに乗り込んだ。



やれやれと亮と顔を見合わせて、俺達も後に続く。



無意識に鈴に目がいく俺。



扉が閉まった狭い箱の中。



鈴の顔が少し強張って見える。



桜はずっと鈴の手を握っていた。



キッチンに2人きりになった時も、彼女は怯えていた。



鈴の過去に原因があるとすれば…きっと男がらみの何か。



だから男が怖い。



多分そうだろう…俺は女が怖い訳じゃないからよくわかんねぇけど。
< 37 / 207 >

この作品をシェア

pagetop