黒い炎
「鈴さん?俺も帰りますから」
それなら…と、鈴が申し訳無さげに言うと、桜がポンと肩を叩いた。
「なに遠慮してんのよ…こいつらに気を使うことなんてないからね?」
俺達を横目に桜は鈴の手を引き、到着したエレベーターに乗り込んだ。
やれやれと亮と顔を見合わせて、俺達も後に続く。
無意識に鈴に目がいく俺。
扉が閉まった狭い箱の中。
鈴の顔が少し強張って見える。
桜はずっと鈴の手を握っていた。
キッチンに2人きりになった時も、彼女は怯えていた。
鈴の過去に原因があるとすれば…きっと男がらみの何か。
だから男が怖い。
多分そうだろう…俺は女が怖い訳じゃないからよくわかんねぇけど。