黒い炎

すっと差し出しされた手を握る。


「こちらこそ」


「キミ…男前だなぁ」


大人――余裕の笑みを浮かべる昴が、優弥の目にはそう映った。



「よく言われます」


「ははっ、ユーモアもあるしモテるだろうね」


「まぁ、そこそこには?」


気に入ったよ…と笑って隣の鈴に顔を向ける。


「鈴が世話になったね」


「いえ」


「じゃあ帰ろうか鈴?」


「はい」


優しく頭を撫でる昴に、安心したように笑う鈴。



そんな鈴の姿は、なぜだか俺を苛つかせる。



昴は助手席のドアを開け、鈴の背に手を添えた。



その刹那――俺は口を開いていた。



「鈴…またな?」


「…鈴?」


ピタリと動きを止めた昴が、ゆっくりと優弥の方を向いた。
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