黒い炎
「…へぇー」と昴は目を細めた。
「あ…うん…また…ね……ゆうや…くん」
ふんわりと微笑んで見せた鈴に、なぜだか身体の奥がぎゅっと縮まる。
なんだこの感じ…。
ぼーっと考えていた俺の耳に、昴さんの声が届いた。
「…それじゃ失礼するよ」
「桜ちゃんまた明日」
「うん、気をつけてね」
鈴が助手席に乗り込むと、車は静かに走り出し遠ざかっていった。
「桜さん…」
「なーに?」
ニコニコしながら手を振っていた桜に亮が近づく。
「あの人の事…好きなの?」
「は?な、何言ってんのよばっかじゃない?!」
「いや…マジで聞いてんだけどオレ」
ガシッと肩を掴み真剣に桜の目を見つめた亮。
「俺のいない所でやれよな…」
呟いた俺は2人を置いて、マンションへと戻った。