黒い炎

「…へぇー」と昴は目を細めた。



「あ…うん…また…ね……ゆうや…くん」


ふんわりと微笑んで見せた鈴に、なぜだか身体の奥がぎゅっと縮まる。



なんだこの感じ…。



ぼーっと考えていた俺の耳に、昴さんの声が届いた。



「…それじゃ失礼するよ」


「桜ちゃんまた明日」


「うん、気をつけてね」


鈴が助手席に乗り込むと、車は静かに走り出し遠ざかっていった。



「桜さん…」


「なーに?」


ニコニコしながら手を振っていた桜に亮が近づく。



「あの人の事…好きなの?」


「は?な、何言ってんのよばっかじゃない?!」


「いや…マジで聞いてんだけどオレ」


ガシッと肩を掴み真剣に桜の目を見つめた亮。


「俺のいない所でやれよな…」


呟いた俺は2人を置いて、マンションへと戻った。
< 40 / 207 >

この作品をシェア

pagetop