黒い炎
きゅっと亮の制服を掴む桜を、亮はキツく抱き締める。
「亮…ありがとう…あたしなんかを好きになってくれて」
「"あたしなんか"じゃない…桜さんだから好きなんだ…俺のほうこそありがとうだよ…」
「あたしこそありがとうだよ」
「いや俺だしっ」
「あたし」
「俺っ」
――ぷっ、どちらともなく吹き出し、2人は"あははっ"と声を出して笑った。
「でも…桜さんのあんな笑顔みたら焦るよなぁ実際」
「あんな笑顔って?」
「昴さんに向けた笑顔…俺、あんな桜さん見たことないし」
拗ねたように言った亮が、子供のように口を尖らせる。
「あれはよそ行きだから」
「よそ行き?」
「作ってるってこと!…好きな人に作り笑顔なんて見せないよ…バカ…//」