黒い炎
心の深淵
優弥は戸惑っていた…胸に渦巻く得体のしれぬ感情に。
鈴を見送った後、自室に戻りベッドにその身を投げ出し目を閉じた。
「…なんなんだよ」
ホッとした表情で兄に微笑む鈴を目の当たりにして、優弥の中で何かがユラリと揺れた。
何故あの時、鈴の兄に対しあんな風に接したのか自分でも解らない。
優弥は気づいていなかった、彼の中で黒い嫉妬の炎が揺らめいていたことに…。
無理もない…今まで恋愛に興味すら無く、ましてや女という生き物を嫌って生きてきた優弥にとって、人を好きになるなんて考えられない事だから。
一時の快楽を求め、拒みきれない身体。
情事の後は決まって、吐き気に襲われる。