黒い炎
己すらも恐れる深い闇。
暗くよどむ淵を覗き、真っ黒な闇に包まれた奥深くに落ちてしまう感覚に陥る。
誰にも触れられたくない…。
他人を寄せ付けないのはそのせいか…。
心の奥を覗かれたく無くて、無意識に人を避けているのかもしれない。
そんな事を考えた事もなかった、考えたところで何ともなかっただろう…今までの俺なら。
誰かを好きになるなんて感情を消し去ってしまった優弥。
黒い炎がユラリと揺れた心の内。
この感情が何なのか解らず、もがき苦しむ。
鈴が兄に見せた安堵の表情が、優弥の目に焼き付き離れない。
嫉妬と言う名の黒い炎が、急速に勢いを増し優弥の心を支配しようとしていた。