黒い炎

<side 桜>


何時もは家になんていないのに…最近は帰りが早い。



ひとつ下の弟…優弥。


どこで何をしているのか、いつもキツい香水の匂いを纏い、帰宅するのは深夜。



ある日の事だった、深夜帰宅した優弥に気づいたあたし。



そっと近づいてリビングを覗くと、優弥が窓辺でうずくまっているのが見える。



「…ぇ?…」



あたしは思わず息をのんだ。



月明かりに照らされた優弥が泣いていたから。



「…俺は歪んでる…狂ってる…汚れてる…なんで男なんだ…俺は…サイアクだ…女なんて…」



呟くように吐き捨てたコトバと、静かに流れる涙。



「…ふっ…ははっ…」



壊れたように笑う優弥。


声も掛けれずあたしはただ…その姿を眺めていただけだった。

< 58 / 207 >

この作品をシェア

pagetop