黒い炎
<side 桜>
何時もは家になんていないのに…最近は帰りが早い。
ひとつ下の弟…優弥。
どこで何をしているのか、いつもキツい香水の匂いを纏い、帰宅するのは深夜。
ある日の事だった、深夜帰宅した優弥に気づいたあたし。
そっと近づいてリビングを覗くと、優弥が窓辺でうずくまっているのが見える。
「…ぇ?…」
あたしは思わず息をのんだ。
月明かりに照らされた優弥が泣いていたから。
「…俺は歪んでる…狂ってる…汚れてる…なんで男なんだ…俺は…サイアクだ…女なんて…」
呟くように吐き捨てたコトバと、静かに流れる涙。
「…ふっ…ははっ…」
壊れたように笑う優弥。
声も掛けれずあたしはただ…その姿を眺めていただけだった。