黒い炎

逃げるように自室に戻り溜め息を吐き出す。



こんな時、ハルさんならどうするだろうか?



そっと抱き締めてやるのだろうか?



ハルさんは優弥の過去を知る1人だ。



あたしはハルさんみたく、優弥を抱き締めてやるなんてできない。



もし突き放されたら?



時々みせる色を無くした冷たい瞳。



あの目で見られるのが怖い。



『おねーちゃん』



無邪気に笑い、あたしの後をついて回っていた優弥はどこにもいない。



女という生き物を嫌悪し、冷めた目をむける。
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