黒い炎

うちに帰りバタンとベッドに倒れ込んだ。



しんと静まり返った家。



桜はまだ帰宅していないし、両親も帰りは遅い…と言うより殆ど此処へは帰ってなんてこない。



色のない退屈な日常を繰り返すだけ。



「だりぃ…」



また呟いて、静かに目を閉じた。



―――…
――…



パタンと扉の閉じた音が聞こえた気がして、俺は目を覚ました。



(…桜か?)



相変わらずダルい身体を引きずり、俺は部屋から出てキッチンに向かった。



(ん…誰だ?桜じゃねーな…)



目の前には、桜の部屋のドアを開けようしているオンナ。



小さくて白い手がドアノブにかかる。



俺は静かに近寄りその手を握り締めていた。



「………ひっ…」



大げさなくらい身体をビクつかせ、彼女は恐る恐る俺の方を向いた。
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